■ 菅野重樹 所長挨拶
ロボットは、最近ではエンタテイメントを中心にさまざまな新しい技術開発が行われています。しかし、超高齢化社会において最も望まれている、人間と共存し環境にも適応できる人間共存ロボット技術は、残念ながら未熟と言わざるを得ません。この背景には、これまでのロボット研究ではロボット自身の高機能化ばかりに目が向けられていたことが指摘できます。将来の人間とロボットとの共生を考えるならば、その環境、特に家や施設の構造と機能を含めた人間ロボット共生系を構築しなければなりません。
 早稲田大学は、1973年に世界初のヒューマノイドロボットWABOT-1を発表するなど、世界のロボット研究を常にリードしてきました。また、建築の分野においても、数々の斬新なデザインを発表し、新しい建築工法を提案するなど、この分野の先端をゆく大きな実績があります。さらに、さまざまな近代技術を支えている通信の分野でも、早稲田大学国際情報通信研究センターを設立するなど研究・教育において大きな成果をあげてきています。WABOT-HOUSE研究では、このロボット系、建築系、通信系に加えて、ロボットと建築のデザインに関わる芸術系も参加し、ロボットと人間の真に実際的な共生を実現するべく研究を展開しています。

ところで、経済産業省・日本ロボット工業会の報告に、これからのロボット産業は大企業指向ではなく、ベンチャーや中小の企業を中心としたコンポーネント産業として拡大すべきであるとの提言があります。そこにはさまざまなコンポーネントを統合する技術を持つシステムインテグレーターも必要になり、その養成が大学に期待されています。岐阜県には潜在的に高度なもの作りの技術力を有する中小企業が多数あります。それら企業の方々と積極的に協力関係を結ぶことで、新しいロボット産業を岐阜県から発信したいと考えています。そのとき、WABOT-HOUSEは人間とロボットの共生技術、そしてロボット学・建築学などの学問をも代表する象徴、メッカとなるでしょう。

ぜひ、早稲田大学WABOT-HOUSE研究所へのご参加、ご支援をよろしくお願いいたします。



 ■ 所長経歴

早稲田大学WABOT-HOUSE研究所所長
早稲田大学理工学術院教授

1958年 生まれ
1986年 早稲田大学大学院博士後期課程単位修得退学
同年早稲田大学助手
1989年 つくば科学万博で展示実演された鍵盤楽器演奏ロボットWABOT-2の運動系の開発研究により工学博士
1990年 同大学専任講師。その後、助教授を経て、
1998年 同大学教授
1993〜1994年スタンフォード大学客員研究員
2001年より自動化推進協会会長
研究分野は、バイオメカニズムを基に人間と機械のコミュニケーションを考える機械知能学。人間共存ロボット、機械における心の発生などの研究に従事。
1990年日本ロボット学会技術賞受賞、2001年日本機械学会論文賞受賞、2002年日本機械学会ロボティクスメカトロニクス部門学術業績賞受賞。
著書に、人間型ロボットのはなし(日刊工業新聞社)、工学設計(共訳 培風館)、身体性とコンピュータ(共立出版)、メカノクリーチャ(コロナ社)など



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