麁香(あらか)神社 精神的中心の復活
日枝神社境内にある麁香神社には建築・工藝の神が祀られている。この建築の古語をちなんだとも言われる麁香神社は、古くから社寺が集中し芸術家や職人が多く住んだこの地域の精神的中心であった。
近代社会の中心は、小学校、大学、会社、と人間の成長とともに変化してきたが、いまやその全てが中心として機能せず、人の精神は中心を見いだせずにいる。
この地には麁香神社があり、人々の生活と密接に結びついた建築・工藝の神がいる。この精神的中心を活かしたまちづくりが太田口通りでは可能である。
緑地の公開と回遊性の整備
かつて近隣の子供達の遊び場であり、サーカスが開催されるなどしていた日枝神社の境内は、現在駐車場として使われている。
この駐車場を、再び非日常的祝祭空間として復活させ、地域の求心力を高める。同時に、足洗川を挟んだ民間の敷地でも、庭園を公開し日枝神社の境内と連続して整備する事により回遊性を高め、歩いて楽しめる都市空間を整備する。
足洗川の再生
足洗川は富山城下と太田地方を区切る境界線で、ここで足を洗って城下に入ったと伝えられている。
現在、足洗川は日枝神社の東側にわずかにその姿を見せるだけで、ほとんどが暗渠化され、人の目にふれることはほとんど無い。
太田口通り商店街発祥の基礎となり、一休禅師の伝説も残る精神的中心の一つであるこの川を、歴史と伝統を認識できる場として再生する。
結界内の車両進入禁止
日枝神社周辺の街区を、神社結界として区別し、原則車の進入を禁止する。結界内を他の区域と区別する事により、求心性を高め差別化する。
これにより参拝者や歩行者が安心して歩ける空間を確保でき、本来都市の魅力である発見や出会いの場を回復する。
共同駐車場の設置
結界内の商店や訪問者用に、現在駐車場として使用れている場所を立体化し、共同利用をはかる。この際、月極駐車場の利用実態を考慮し、駐車場の有効利用率が高くなるよう新たな運営方法を開発する。
伝統技術を活かした庭園・建築整備
麁香神社やこの地の歴史にちなみ、この地域を富山の伝統的建築・庭園・文化を体験できる場として整備する。
区域内の建築は可能な限り、伝統的手法を用いた建築とし、祝祭時に一般へ公開する。
伝統的文化・技術継承者の居住
地域内の建物や庭園の維持管理に従事する職人を優先的に居住される等して地域の個性化をはかる。また、伝統行事や祝祭行事への住民参加を積極的に推進する。